2011年12月19日(月)
3.11以降、脱原発が騒がれているが、原発をそのまま太陽光発電で代替出来るか考えてみた。原発は出力調整が頻繁に出来ないため、もっぱらベースライン電力として使われているが、これを太陽光発電で置き換えるとどうなるか計算してみた。
結果から言うと100万キロワットの原発を置き換えるためには、発電能力が2,000万キロワット以上の太陽電池パネルと5,500万キロワットアワー以上の容量のバッテリーが必要となる。
コスト的に不可能だろう。
前提条件は、出力100万キロワット、設備利用率80%の原発を太陽光発電で置き換える事とし、太陽光発電の設備利用率は13%、ベースライン電力なので夜間や日中の天候の悪いときはバッテリーから電力供給するとして、バッテリーの充放電効率が90%(NAS電池を想定)とした。ベースライン電力なので出力は一定とするので、太陽光発電の変動分を押さえるため24時間バッテリー経由で系統連携する。もちろんバッテリーに充電するのは太陽光発電だ。
原発の年間の発電電力量は
100万キロワット×0.8(設備利用率)×24時間×365日=7,008,000,000キロワットアワー
つまり、70億800万キロワットアワーだ。これを太陽光発電で作り出す事になる。
この値を太陽光発電の設備利用率13%を使い逆算して出力を計算すると
7,008,000,000÷24÷365÷0.13=6,153,846キロワット
原発と同じ80万キロワットを得るためには、約615万キロワットの発電能力が必要となる。つまり、原発の約6.15倍の設備が必要だ。
お天道様がしっかり出ているときはベースライン電力80万キロワットの7倍近くの電気が余る事になるが、余った分は夜間や天候の悪いときのために充電にまわす事になる。
ところで、設備利用率とは、1年間に実際に発電した電力量が、その設備がフルに1年間24時間発電したときの電力量に対する割合であるから、フル稼働した時間を表す事にもなる。太陽光発電の場合はそれが13%であるので、日数にすると年間約46日間となり、残りの319日分は充電しておいたバッテリーから供給する事になる。1日にすると3.12時間(3時間7分)と20.88時間(20時間53分)だ。(稼働時間は能力の100%で発電した場合である事に注意)
年間70億800キロワットアワーの87%であるから、累積で1年間60億9696万キロワットアワーがバッテリーから給電される事になる。
もちろん、一年間のうち最初の46日間(1,104時間)の充電で残りの319日分(7,656時間)をまかなう訳ではないので、そんなに巨大な容量は必要ない。
では、どれだけの容量のバッテリーを用意しておけばいいのだろうか?
充電と放電の時間比率を一定とすると、その比は46日:319日だから、1:6.9、約1:7となる。
一日に置き換えれば、3時間のフル充電時間で残りの21時間放電する事になる。ただしこの条件は毎日同じ天候が続く場合だ。台風が来たときなどは3日間くらい太陽が出ない事があるかもしれない。そうすると3時間のフル充電で69時間放電出来る容量のバッテリーを用意しないといけない。その比率は一挙に1:23となる。
80万キロワットを69時間だから、必要なバッテリーの容量は5,520万キロワットアワーとなる。充電と放電のバッテリーの効率を90%としたから、バッテリーに充電するための電力量は5,520÷0.9=6,133万キロワットアワーとなり、これを3時間で済ますためには、6,133÷3=2,044万キロワットの発電能力の太陽電池が必要になる。
これは最初に計算した615万キロワットの3倍以上だ。80万キロワットをコンスタントに得るために2,044万キロワットもの設備が必要となる。
これで設備利用率を計算すると
(80×24×365)÷(2,044×24×365)×100=3.91%
たったの3.91%だ。
真剣に原発を太陽光発電に置き換えると広大な設置面積と、大容量のバッテリーシステムが必要になる。
NAS電池は電極に「もんじゅ」で大問題になったナトリウムを使う。容量が5,500万キロワットアワー以上もある設備を考えると安全対策に万全を要求されるだろう。
バッテリーの事故対策なども考えると、発電コストはとんでもなく高くなるだろう。
バッテリーでベースライン電力を供給する期間を短くし、不足分のバックアップとして火力発電などを使うとすると、太陽電池もバッテリーの容量も少なくても済むが、火力発電所はすぐに稼働させたり停止できないので(ボイラーで蒸気を発生させるのに時間がかかる)、常時最低出力で運転させなければならず、無駄が多い。
コストを度外視しても、ベースライン電力を供給している原発の替わりを太陽光発電でまかなうのには無理がある。
もちろん、コストが一番最初にネックになるが。
設備利用率が低い風力も同様の問題を抱える事になる。
この辺の事を原発をすべて廃止し、すべて自然エネルギーでまかなうべきだと言っている人たちは分かっているのだろうか。
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