貧困につけ込むアメリカという国
2008年11月26日(水)

イラク米軍脱走兵、真実の告発
この『イラク 米軍脱走兵、真実の告発』は、おそらく今も続いているであろうアメリカによるイラク国内で組織的に行われている犯罪行為を告発したものだ。
作者は自分がイラクで体験した事に対して、自らの良心に従い脱走兵となったアメリカ陸軍のジョシュア・キー氏だ。
ここで『アメリカ軍』とではなく『アメリカ』としたのは、イラクでの戦いを継続するための兵士の調達システムに、アメリカという国のあり方そのものが関係していると感じたからだ。
現在アメリカには徴兵制はなく、新たな軍の人材は全て志願である。
しかしその実態は今では様々なメディアで紹介されているように、結果的に作者が言う『貧困徴兵制』だ。
Wikiのアメリカの徴兵制の歴史では、貧困層出身者が自己の教育・職業の可能性を開拓し、所得・生活水準を向上させる方法
としては軍の制度が充実しており、手軽で貧困層が集まりやすいとした上で
アメリカ全体と所得階層の構成比率と比較して、貧困層が就業する比率が高い業種・職種は多種多様に存在する。個々の業界・職業ごとに、その業界・職業の就業者の生育時・就業時の所得階層の構成比率が、アメリカ全体の所得階層の構成比率と同比率になるわけではなく、どのような業界・職業でも、アメリカ全体の所得階層の構成比率との差異は存在するので、そのこと自体は軍隊固有の事象・問題ではない。
と述べており、現在の志願制については制度上特別問題はないような記述がある。
しかし、様々な職業と軍隊を同一にして片付ける事は出来ない。
貧困者が何らかの制度で一般的な職業に就いたとしても、軍人として作戦行動に赴き、それが原因でPTSDになるような事はほとんどないだろう。
問題は訳者の井手真也氏や作者のジョシュア・キー氏も述べているように、アメリカ陸軍の募集活動がほとんど詐欺的に貧困層を狙って行われている事だ。
軍のリクルーターはジョシュア・キー氏のようにトレーラーハウスでしか暮らせなほど貧しいにもかかわらず、アメリカは正義の国であると信じている無垢な若者を狙う。それ以外の金持ちは募集の対象にもならないし、志願もしない。
詐欺的であると言うのはジョシュア・キー氏の場合、新兵募集センターで約束された事は、アメリカ本土での橋梁建築作業で、なおかつ戦闘任務がないという事であったからだ。
しかも、積極的に彼らは募集活動を行い、より安全な他の経済的支援策から目を逸らせている。
Wikiのアメリカの徴兵制の歴史によると志願兵制では就職先または除隊後の大学奨学金を求めて、経済的に貧しい階層の志願率が高くなるので、経済的階層に関わらず軍務を国民全員に機会平等に配分するという考え
に基づき2004年に徴兵制を復活させる案をごく少数の議員が提出したが、圧倒的多数(賛成2票 - 反対402票)で否決されたとある。
アメリカ議会もこの『貧困徴兵制』に結果的に加担しているのだ。
ジョシュア・キー氏のメッセージ
この本自体はイラクでアメリカ陸軍が行ったイラク人に対する虐待を告発しているものだが、その中でこのイラク戦争の意味について次のように述べている。
ぼくは、アメリカ軍司令部の上のほうの連中が、テロリストを捕まえれば大量破壊兵器を発見できるとまじめに信じ込み、その結果、われわれ兵士たちに、何千人もの市民の家を襲わせることにしたとは思っていない。ただ単に、イラク国民を痛めつけ、脅したいがためにやったのだと思っている。アメリカ軍の目には、イラク人は人間として映ってはいなかった。イラク人はテロリストであり、自爆攻撃者であり、「砂漠のニガー」であり、「ぼろ頭」だった。
イラク戦争が始まった当初、真の目的は石油の利権にあるとの憶測もさんざん流れた。しかし、時が経ちイラクの現状を見ると、そんな理由のほうがよほど真っ当に思える。
そしてアメリカ兵がイラク国民に対してもたらしたものは
われわれは、民主主義とよい政治体制をイラク国民にもたらすのだと主張してきた。しかし、われわれがもたらしたものは憎しみと破壊だけだった。イラク国民がアメリカから受け取ったのはただひとつ、今後何世代にもわたってアメリカ人をさげすみ、おそらくは殺してやりたいと願う動機だった。
と述べている。その結果あり得る一つの可能性として
9月11日のアメリカ合衆国に対する攻撃は卑怯で卑劣な犯罪だと考えている。・・・略・・・その一方で、われわれのイラクでの行為が、あのテロと同じような攻撃の引き金になるのでないかと懸念する。家宅捜査や虐待や拘束を経験して生き延びたイラクの青年たちは、全員が復讐の動機を持っている。彼らが組織化されたらどうなるか。ミズーリで軍の訓練兵300人の一員として、あらん限りの大声で「砂漠のニガーを殺せ」と叫びながらわら人形に銃剣を突き刺していたことを思い出すたび、ぼくは、この戦争を生き延びたイラク人が、われわれより野蛮な存在でないことを内心、祈るのみである。
全くその通りだと思う。一つのテロをきっかけにアメリカは自国の貧困層を利用し、世界中に永遠に続くテロと、PTSDになる若い兵士の生産システムを構築してしまったのではないだろうか。
そして本の終わり頃には彼は次のように述べている。
ぼくは大統領とひざを交えて話をしたいと思っているが、それよりも『貧困徴兵制』に応募しようか迷っているアメリカの若者一人ひとりと30分でいいから話をしたいと思っている。2002年3月にオクラホマの新兵募集センターに車で向かったとき、ぼくの一家はあまりに貧乏で他に選択肢がなかった。しかし、もし、上等兵の月給1,200ドルと引き替えにぼくがやることが、イラク人の家々に押し入り、女たちと子どもを脅し、手当たり次第男を拘束することだと知っていたなら、絶対に応募しなかっただろう。なんとか別のどこかで、仕事と生きる糧を見つけていただろう。もし自分の国がイラク戦争で何をしようとしているか知っていたら、国のために戦地に赴くことはなかっただろう。
いまイラクは駐留軍の規模縮小が言われている。それはアフガニスタンに主力を注ぐためとも報道されている。いずれにしても兵士の需要はあるのだ。
私は、彼が軍からの脱走と言う重大な罪を犯した後に著したこの本を読んだとき、この『貧困徴兵制』こそが一番伝えたい事ではないかと思った。
この事を一人でも多くのアメリカ青年に知ってもらいたかったのではなかろうか。








コメント(4)
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トラバありがとうございました。いや、このような書籍が出ているとは知りませんでした。又一度本屋を覗いてみます。ご指摘のように、『貧困徴兵制』こそが、種々の問題を生んでいるのだと思います。その本質が「アメリカの正義」という名前で多い隠されているというところが、そろそろ破綻してきているようにも見えますが。甘いでしょうかねえ。(汗)
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ウフフマンさん、コメントありがとうございます。
アメリカの超格差社会は今に始まった事ではないので、貧困層は搾取されっぱなし、富裕層はますますお金が集まるという構図はそう簡単には解体されないでしょう。
先日、国民皆保険制度がないアメリカでの貧困層の医療状況のドキュメンタリーをNHKでやっていましたが、お金がないから診察に行けない→そのうち病状悪化→緊急入院→時すでに遅く、なす術無く死亡というとんでもない状況になっているようです。
残念ながらクーデターか革命でも起きない限りこの状況は変わらないと思います。
サイト: http://www.pianocraftwork.com/mt/
初めまして。TBありがとうございました。
アメリカの新自由主義が生み出した格差は、戦争ビジネスと言う形で展開しています。貧困をも食い物にするという意味では、サブプライムローンも日本の派遣会社も似たようなものですね。戦争が貧困を決してすくわないとあらためて感じます。
アメリカのどうしようもない社会体制については、岩波新書の「ルポ 貧困大国アメリカ」堤未果 著を是非読んでみてください。
サイト: http://www.my-sapporo.com/
pianocraftさん、コメントありがとうございます。
TVで放送されていましたが、アメリカではどんなに貧しくても都会を離れれば集合住宅がなく、公共交通機関もないので、選択の余地がなく、どうしても一戸建ての住宅と車が必要になると言っていました。
まったく社会体制が無理矢理貧困層に一戸建ての家を購入するようにしむけているようです。